2008年 03月 22日
サファリ-366 高岡陽という男 |
彼ほど人間臭い男はいないと思っています。
明るいときは文字通り太陽のように周囲を照らし、
一定のサイクルで必ず夜が訪れ、自身の闇に埋没する。
彼の人間臭さは酒を飲ませるとさらに、
沈殿物まで一緒になって底の方から沸き上がってき、
引きづり込まれると抜ける事ができない。
しかしその生暖かい人間世界は一緒にいると意外に心地よく、
最後は殴られたりして終わるんだけどなぜか一切のわだかまりが残りません。
唯一殴り合った事のある友達です。
殴り合ったというのは同時に闘ったのではなく、
それぞれが一方的だった気がする。
私が始めて彼を殴ったのは浪人のとき、
高岡君はデッサンが思うように描けず、先生から
「ストイックさが足りない」
と言われて、どうすればストイックになれるか一緒に無い知恵を絞って
ようやく出た結論が、毎日バカバカ吸っていた大好きなタバコを止めると言う事。
デッサンにまったく関係のないこの修行で果たして絵が上達するかは謎でしたが、
精神論が全てを支配する美大受験において
ちょっとだけ期待できる処方である気がしたのです。
「よし、俺も付き合ってやるぞ」
などと私も一緒に盛り上がり、1週間ほど経ったある日、
高岡君が私の家に泊まりにきた。
彼の後に私は風呂に入ったのですが、排水溝に吸い殻を発見‥‥‥
それで殴ってやったと言う訳です。
何とも微笑ましい男の子の友情ですよね。
私が殴られたのはたいしたことはない話しなんですけど、
私が女にふられて酔っぱらって泣いていたら、
「尾崎悟が何さらしとんのじゃあああ!」
と言いながらボコボコ殴るんです。
そんなとき、親友なら普通は慰めますよね?
ヒドイ話です。
きっと彼は悔しかったのでしょう。
おざきをふった女に対しての怒りと、
情けない私の姿を見て、
その矛先がたまたま目の前にいた私に向いてしまった。
帰りの始発電車の中、本当は独りになりたくなかった。
しかし、アンパンマンみたいに腫れてズキズキとする痛みに耐えていたら、
なんだかまだ彼と一緒にいるみたいで、
とても安心できました。
そんな感じで純粋で楽しい青春時代を共に過ごして、
喧嘩もしたし何の利害関係もないけれど、理屈じゃなく好きで、
絶対に失いたく無い友達なのです。
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by utyuuinu
| 2008-03-22 05:11
| 人