2007年 07月 08日
サファリ-212 肉 |
3年ほど前、木を削る作業をしていて左手の薬指の先っぽを
飛ばしてしまったことがあります。
電動カンナという、木の表面を平らに加工する機械。
高速で回転する機械の中に一瞬で指を引き込まれてしまいました。
「熱い」と感じ指先を見る。
そこには指の断面が見えました。
コップに注いだ水が耐え切れずに溢れるように
滾々と湧き出る泉のように、
真っ赤な血が指先で膨らんだ映像を今でも鮮明に覚えています。
木を削るとき、私は必ずその時のことを思い出す。
削ったり切ったりしながら
痛いだろうなぁ・・・と。
削ると木目が見えます。
削る前には見えなかった表皮が空気に触れる。
削る
見る
削る
見る
の繰り返し。
今のこの表皮が空気に触れるのは2度目です。
1度目はその年代に森の中で育っていたときです。
蝉がとまって鳴いたり、コゲラがコンコンノックしたり、
台風の激しい雨風に晒されたりしていた時代があった。
数百年経って、私がその表皮に今触れて、見ています。
無垢の木は削っても削っても肉が見えます
血が通い、育ち、歴史を持っているイキモノとしての材料は、
作る過程で数え切れないほど多くのことを
私に教えてくれるのです。
by utyuuinu
| 2007-07-08 02:07
| プロセス