2007年 07月 03日
サファリ-207 リサイクル |
長さが5m、幅が60cm、厚みが15cmもある赤松です。
建築の鴨居の部分でした。
この下を200年ものあいだ襖が行き来し、
あるときには取り払われて宴会、葬式‥‥‥
何代にも渡って大家族の歴史を見下ろしてきた材料です。
当時の大工さんが全て手作業で作ったものだから、
左官の土を剥がした下に墨を打った痕とかメモ書きした寸法とか、
釿(ちょうな)や鑿(ノミ)の痕が生々しく、
製材してしまうのが惜しいくらいです。
民芸風居酒屋とかに飾りでこういった素材が使われたりしますが、
私はあまりそのような使い方は好きではありません。
アンティークとか、博物学的な価値観で素材を見てしまうと、
それらを「そのまま保存しましたよ」っていう感じで空間に使われて、
その空気は確かに懐かしさや落ち着きを感じるけれど、
例えば構造として使われていた材料を、
古びた味わいがあるというだけの理由で陳列して、果たして
その材料は喜んでいるだろうか‥‥‥
結局そのような素材をちりばめる空間のデザインは、
その素材の表面の味わいだけが求められているだけで、
うわべの感じがするのです。
ディズニーランドのスプラッシュマウンテンの
義岩(岩に似せて樹脂で作った偽物)と、質的には同じ。
ホンモノを持って来てしまう分、罪深いと思う。
素材のポテンシャルを最大に引き出し、現代に生きる私が
どこまで美しいものが作れるか、挑戦してみたいと思っています。
写真は1部を漆喰で塗り込めてあったところ。
ガッチリ食い付いていて剥がすのに苦労しました。
左官の下地に食い付きを良くするための、
斜めの細い溝が彫ってあり、それはフリーハンドで
ひっかかれているのですが、手でやったにしては几帳面で正確です。
心を込めて平行、等間隔に、しかしそこには
手作業でやった微妙な歪みがあり、リズムが美しい。
by utyuuinu
| 2007-07-03 00:49
| 作品/intermezzo 間奏曲