2007年 06月 30日
サファリ-204 あれの出番-3 瀕死 |
母屋の解体にはまる3日を要しましたが途中大雨で休みの日がありました。
夜になり、私は半分まで解体された家を見に行った。
現場はひどくぬかるみ、ふくらはぎまで泥だらけになり、
雨に降られて困った旅人が、やっとのことで空家を見つけて駆け込むように
危険を承知で入ってみるとそこには異様な世界がありました。
砂と泥だらけの畳に土足のまま上がる。
人の家に土足で上がるのはとても心が痛みましたが、
もはやこの家は明日にはなくなるのです。
私はかつてない衝撃、まったく経験したことのない
胸が締め付けられる思いがしました。
とりわけショックだったのは、匂いが強烈なのです。
古い家の匂い、田舎の匂い。
でもほのかに鼻をくすぐるのではなく、むせ返るように溢れている。
それは引き裂かれた家の血の匂いのようでした。
今のこの気持ちをなんと形容したら良いのだろう。
それはさながら‥‥‥
片足と両腕を爆撃で吹き飛ばされ、しかしなおも息をしている戦友を
野戦病院に見舞った時のような心境。
励まそうと握る手も無い。
by utyuuinu
| 2007-06-30 11:45
| 作品/intermezzo 間奏曲