2007年 06月 13日
サファリ-190 漣-13 |
地板の正面に座り、奥行きと広がりを幾時間も空想していました。
すると、けぶっていた霧が晴れて妖艶な水面が姿を表しました。
実際の、90cmの奥行きよりも
ずっと深い空間がそこにはありました。
遠くの方では魚がはねたり
水鳥が水面スレスレを飛んでいるのも見えました。
それまで私は「海」を作ろうとしていた。
しかしここにあるのは沼、、池‥‥‥!
そうです。茶室の前に拡がる池だったのです。
磨かれた事によって波のエッジは丸くなり、
トロ〜ンとした甘い水が表現されていました。
この作品に必要なのはこの柔らかさ、
穏やかさだと言う事を確信したのです。
そして水平方向だけでなく、
垂直方向、つまり水深まで表現したい、、、。
これまで私が鉄板に付けて来た打痕は単なる金槌の痕でした。
しかし今は違います。より大きな遠近感を出す為に、
手前の方は大きなハンマーで大きな鎚目、
奥の方は小さなハンマーで囁くように小さな鎚目。
でも、全ての鎚目は水中深くに沈んで行くように、
自分までその深淵に埋没していくように!!!
それは偉大な演奏家がひとつの鍵盤のタクトに
様々な意味を込めて1打するのと同じです。
それからというものは私の“作業”は“演奏”になりました。
佐倉の空を周回するトンビや、水面に舞い降りる、
実体反転一対のアカトンボに微笑みながら、
水面は奏でられていきました。
by utyuuinu
| 2007-06-13 02:37
| 作品/本流