2006年 11月 12日
制作の道程-39 和音 |
ふたつの音が同時に響くとき、ひとつの音では想像もつかない
ある深い意味と固有性をもった新しい音が生まれます。
作曲家はそれをさらに組み立てて旋律にする。
私の作品もふたつの風景が重なるようにイメージしています。
新しい和音を発明する時、とても便利なやり方があるのです。
まず、何とかして涙を出す。
涙がこぼれ落ちそうになるギリギリの状態で、
少し目を細めるようにすると‥‥‥
目の前の風景がゆらゆらとぼやけて滲みます。
ゆらぎの世界の中で、そうしながら実際に見えている歪んだ風景に、
もうひとつ、自分の中にあるモチーフや風景をだぶらせるのです。
1日の始まりを予感させる蒼暗い森、
全ての音と光を吸収してしまう霧の闇、
風に翻弄され、部屋の中に無造作に投げかけられる梢の光、
コーヒーポットに一瞬現れる波紋、
クリ色の艶やかなヒメネズミの毛艶、
ドビュッシーのベルガマスク組曲、
目の前に展開するすべての風景が
揺れていて、滲んで、幾重にも
私の心に現れては消え、
自分自身もその世界に溶けて行くのです。
by utyuuinu
| 2006-11-12 13:18
| プロセス