2007年 01月 19日
サファリ-85 bon vivant |
横浜市青葉区にボンビボンというパン屋さんがあります。
数年前に私が内装の金物を作らせていただいたお店。
オーナーのパン職人である児玉圭介さんと始めて会ったのは
建設会社の打ち合わせ室でした。
「おう、俺はパン屋だ。お前は何だ?金物屋か?」
みたいな目をしていた。(実際はとても謙虚で上品な男です)
その時の私の洞察力は正しかったとすぐに判りました。
埼玉のまん中へんで親父さんがやってきたパン屋の跡継ぎでしたが、
自分の店を持ちたいということで横浜に出て来たのです。
なぜ青葉台に?
訳を聞いて目が点になりました。
「青葉台は神戸に並んで、日本一のパン屋の激選区だから。」
たった1人で日本一レベルの高い街で開業する‥‥‥
その事実を聞いただけで、私は彼のために本気になって作ろうと、身体が震えました。
もうひとつ、決定的に彼に惚れてしまった言葉があります。
「行列が出来ている他の店のパン屋のパンを試しに喰ってみるとまずい。
俺のパンがもしかするとまずいのかもしれないと、いつでも不安になります。」
「それ!凄く、物凄くよく解ります!俺もまったく同じです!」
彼は自分の中に基準を持っている。自分と闘っている。
自分ほど強大なライバルは他にいない事を身を持って知っている。
尊敬と同胞意識。ジャンルは違えどこの男は一流のアーチストだと思いました。
その日は私と会うためにセッティングされた打ち合わせだったので、
彼は私に食べさせようと自分が作ったパンを
段ボールに満タンにして持って来てくれました。
フランスパンを切って食べてみた。
‥‥‥革命的でした。
小麦を膨らませて焼いただけのシロモノなのに、
これは何だ!
フランスパンって私はあまり好きではなかった。
乾いているし、食いちぎるのに苦労する。
ところが彼のフランスパンは、表面がカリカリ、サックリ破けて、
中はフワフワなのです。
もっちりしていて甘くて、小麦の香が爆発して‥‥‥
芸術品でした。
他に、味が付いたものもたくさん入っていました。
カマンベールが詰まったパン、黒胡麻と生クリームのパン、栗のパン、果物、
もう勘弁してください。旨すぎます‥‥‥
写真は入口から見た店内。正面のパンの棚とトング掛け、床材を私が作りました。
床は鋳鉄のタイルです。砂の型で鋳造するので
鋳肌が独特の風合いです。
by utyuuinu
| 2007-01-19 03:01
| 作品/intermezzo 間奏曲