2006年 12月 11日
サファリ-54 洗礼-1 |
最近なぜか昔の事を思い返します。自分がどうやって今に至っているのか、
どうしてこんなんなっちゃったのか。
心の中は次の作品の事で張り裂けそうだけど、
そうしていられる自分を育んでくれた過去を回想する回数が
10秒に0、2秒くらいの頻度で出て来ます。
中学生の頃、私は野球部でした。巨人の星になんとなく憧れて、
ヘタクソなくせに始めてみた。
当時私が通っていた中学校は超マンモス校で
1ねん16組とか2ねん18組(1クラス45人!)
全校で2千人以上はいたと思う。当時野球は人気があったから
部員は常に100人以上いた。
身体は小さく才能も無く臆病だったので、当然補欠。
顧問の監督先生は完璧なる実力主義でした。プロのチームみたいだった。
補欠要員の候補選手にノミネートされるだけでも大変で、
ノックを受けさせてもらえるチャンスすらなく、練習の時の私の仕事は
グランド整備、道具出し、中腰で構えて声を出す。後片付け。以上。。。
それを2年続けて、結局たったの1度も試合に出る事はできず、
ベンチに座る事も無く、バッターボックスに入る時のドキドキなんて
味わった事もなく、他人事みたいでした。
いたたまれなくなって、3年の最後の大会が始まる前に退部しようと決心し、
おやじにその事を打ち明ける。
「途中で逃げるな」
徹夜で散々話し合い、やはりどうしても嫌で辞める事になり、
翌日職員室に向かいました。
前の廊下を何度も往復し、意を決して先生のデスクに行き、
先生は何かの執筆中で
「先生。」
私に一瞥し再び仕事を進めながら
「なんですか?」
「あ あ あ あの‥‥」
「あの‥‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
執筆しながら
「何?」
「野球部を たたたた 退部したいんですけど‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
執筆しながら
「はい。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥???」
執筆しながら
「何? わかりました。 もういいよ。」
深い海に潜ったみたいに鼓膜をしっかりふさいだように無音で
学校の廊下の喧噪や窓を拭く女生徒、放課後のチャイム、
砂の溜った下駄箱、私をあざ笑い見下ろす校門のトーテムポール‥‥‥‥
いつも通りに見える風景があまりにも冷酷に
乾ききって揺れていました。
空虚な斜陽。
校門を出て歩いた。
涙も出なかった。
by utyuuinu
| 2006-12-11 20:02
| プロセス